GLは、脳が何らかの能力を獲得するときは、かならずその前に準備状態があると考える。
準備とはシナプスの密度が高まることだ。
「回路構成が一定レベルに達して、十分に配線ができあがったところで、目に見える行動となって現われる」子どもが年齢を重ねるにつれて、脳の前頭前野はどういう働きをして、どう発達していくのか。
神経科学者はそれを確かめるために、数多くの実験を試みている。
実験を受けるのはサルでも子どもでもよく、最初に青と黄のボタンのうちどっちを押すか決める。
たとえば青のボタンを押すとごほうびがもらえるので、被験者はすぐに学習する。
こうしてしばらく青ボタンばかり押させたところで、ルールを変更し、今度は黄ボタンを押さないとごほうびをもらえないことにする。
サルや人間の子ども、また前頭前野に重い損傷を受けた人は、このルール変更にすぐ対処できず、青ボタンを押す衝動にいつまでも従ってしまう。
しかし人間の子どもは大きくなるにつれて、規則変更にうまく対応しはじめる、これもまた、前頭前野の長期にわたる継続的な成長と足並みをそろえている。
12歳を過ぎると、青ボタンを押したいという本能的な衝動をうまく抑えこんで、一度よく考えてから黄ボタンを押せるようになる。
Uの神経学者JMによると、「脳は抑制マシンだということは、実はあまり知られていない」という。
さらに詳しく説明するために、彼は模倣について語りはじめた。
人間にかぎらず、動物が学習するうえで不可欠なのが模倣というわざであり、人間はもともと模倣するようプログラムされている。
「私のやることを見ててごらんなさい」大学の研究室で話を聞いたとき、Mはそう言って大きなデスクの前にどっかと腰をおろすと、コーヒーカップを口もとまで運ぶ動作をしてみせた。
「いまあなたは、私を見ながら脳のなかで同じ動作をくりかえしていたはずです。
われわれは模倣する動物で、模倣することで新しいことを学習する。
しかし同時に、脳は模倣も含めた不適切な行動を抑制することも必要になる。
これが脳の仕組みなんです」Mは神経学の教科書を開いて、ひとりの女性の写真を見せてくれた。
ひざまずいて祈りを捧げる男性の隣で、彼女も同じように祈っている。
この女性は脳に損傷を受けて、ある種の行動を抑制することができないという。
ひざまずいて祈りたいなんて少しも思っていないのに、脳がやろうとすること、つまり目に入った動作を模倣することを止められないのだ。
動物園のサルに変な顔をして見せると、サルがすぐまねをするのと同じである。
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